裁判所の検察審査会に出席している。選挙人名簿から数度のクジで当たったのだ。任期は半年。
三ヶ月が過ぎてやっと自分の使命がわかってきた。簡単に言えば検察から周ってきた本物の事
件の資料を読んで、起訴をする、しないを票決するのだ。
 

平成十五年度 2003年 第一群補充員 岡村隆久

「検察審査会という言葉を知っていましたか」「検察審査会とは何の会議か知っていましたか」こんな言葉で半年間
の任期が始まった。ひとだかえもあるような書類を読んでくださいとどさり、他所は知らないが都会は事件が多いので
一日数件のペース、会議を重ねているうちに書類の読み方がわかってきた。検察審査会へ申立てた人と申し立てられた
被疑者、申立て人の言葉、不起訴にした検事の言葉、これらを日時を絡ませて取り調べ調書を読んでいく。取り調べ調
書は警察と検察の両方の物が複数ある。申立て人と被疑者以外にその周辺の人々の調書、前科の照会。「むむ、この人
は前科があるな、前科は無いけれど交通違反は頻繁にあるな」ここまでは簡単に進みそうだが普通の人ばかりではない。
「申し立て人の方が悪くて疑わしいのでは?」と頭をかしげる事案も多かった。世の中に腹をたてている人、民事の裁
判に負けた腹いせに申し立てる人、被害妄想癖のある人、普通で真摯な気持ちで訴えている人「あれれ、この申立て人、
ちょっとおかしいのでは・・」と気付かされる人も多かった。日本のいろんな事がアメリカナイズされている今、契約
と告訴の国アメリカに倣って、裁判所に訴えを起こす人が増えているようだ。人は黙って我慢するなんてもう美徳で
はないのかな。
半年間に何回か裁判傍聴、大阪府警見学、刑務所見学、普段には考えられない場所に連れて行っても
らった。物を創る現場で過ごしてきた生きざまの私にとって、司法の世界は別世界だった。素人なりに書類を読んで
善悪を判断し、いくつかの事案をこなしてきた。わからないままに票決した、今なら意見が変わっていると思える事案
も思い浮かぶ。素人の我々に法律のいろはを教ながら我々の発言を聞いてくれた事務局にも頭がさがる。
幾つかの疑問
もわいてきた。検察審査会は民事事件を扱わないのは何故。検察審査会での会議内容の守秘義務はどんな範囲。審査員
とその補充員の区別は。近い将来できる裁判員制度でも補充員は要るのだろな。

 
 ●裁判所の中に検察審査会がある。11人の審査員の出席で会議が成立する。一般人の審査員
 はセーターやTシャツで気軽に出席。事務局の人たちは、やあやあと迎えてくれて、一日
 5〜6時間の審査会議が始まる。
●積み上げたら何十センチにもなる資料。事務局が資料のまとめた物を作るが、たった2、3時間
で全部を読んで事件の全体像をつかみ意見を言い合って評決をする。時間
が足りるかな。

検察審査員は地方自治体の選挙人名簿からくじで選ぶそうだ。さいごの100人は裁判所で検事・
裁判官・市選管らの立会いのもとガラガラを回して11人が選ばれ、招集令状が発送される。一般
国民が司法に参加するのはいいことだ。数年先には裁判官も一般から選出する制度ができるそうだ。

チマタのこんな声を聞く。貴重な一日をつぶして裁判所なんかに行ってられない。
 ☆暇がない、時間が惜しい。
 ☆大事な仕事がある、この時間を逃したら誰が償ってくれる。
 ☆そんな安い日当で一日拘束されるのは・・。
 ☆私が行ったところで。司法の事は司法の専門家にまかしておけばいいのでは。
そんなこと言わずに出席しましょう。国民の義務だ。
 
 
 ●<情願> 受刑者が法務大臣にSOSを直訴する制度 新聞によると刑務官から暴行を受けたという情願、
  2年で250通。刑務官への懲戒処分無し。司法関係者が頭を下
げてる姿はあまり見ない。

●監獄法 100年前刑務所の事を監獄といった。その頃の囚人に対する懲罰がいまだに存在する。

●検察審査会 議決に不起訴相当・不起訴不当・起訴相当の三とおりがある。簡単に言えば検察が裁判所に
起訴しなかった事件に対して、それでいい・それは反対・裁判す
べき、三とおりだ。

○○刑務所○○号室の壮年の男、前科がいくつもある彼が、看守に暴行、暴言を受けたと傷害罪
で訴えた。なんとなんと!訴えられている方が、事件の内容を調べて資料を作っている。それで
も司法の世界ではコレはりっぱな公文書なのだ。(看守は警察官だから資料を作る義務がある)
「そんな調書に証拠能力あるの?」思わず声が出た。刑務所内、勿論どうしようもなく悪い囚人もいるだろうけ
ど、後味の悪い会議。
 
 
 ●金銭の貸し借りは民事事件で刑事事件にはならない。金銭がらみの事件は、横領
 罪、詐欺罪、偽証罪などとして刑事事件になる。

●裁判所では、証人や検察審査員には日当と交通費が出る。

若い頃に兄弟の契り盃を交わした二人の男。二人はどんどん出世して親分になり、引退して、堅気になった。
ひとりが兄弟をだまして金をうばった。だま
された方が訴えた。
 
訴えた人の調書、やくざの世界、そのしきたり。信頼しきっている兄弟が自分をだますはずが無い、
でもおかしい時間が経ちすぎる。元やくざの親分が警察や裁判所に駆け込んだ後ろめた
さ、
兄弟に脅され怖いとおののく彼、そんな揺れ動く気持ちが、悶々と伝わった。


暴力団の 社会悪を 追及する検事、しない検事。 あなたにとって 暴力団は 社会悪か? 必要悪か?
▲土建業界の 談合は 良くないけど ないとこまると 言っていた関係者 
▲長
く こういうやりかたで やってきたので 不正はわかってるが やめられない という役所
▲なんでもかんでも もう少し ガラス張りにせんと いかんのでは!! 
 
 
 ●裁判所の法廷は、いつでも誰にでも、公開してる。

●この法廷では、一人の裁判官、一人の検事がいつづけ、被告とその弁護士が次々と交代し
 て、何件もの裁判が進行していった。

●40歳代の裁判官はノートパソコンに資料を入れ、それを見ながら裁判を進めていた。別の検事は分厚い資料を
繰っていた。弁護士もパソコンを持参した人はいなかった。膨
大な資料や写真、パソコンに収納するのに限るね。

●ある日の検察審査会で<不起訴不当-検察が裁判しないと決めた事件にアカンと>の票決。
 検事は「議決の指摘事項を検討の上再捜査、処分を決めたい」 検察審査会には決定の権
 限はない。決めるのは検事。

判決を言い渡します。禁錮八月(はちげつ) 刑の執行を四年猶予する。二度と裁判所に来ることのないように、
がんばって生活してください。
諭す裁判官。うなだれる被告。うなずく傍聴席の家族。入廷時には手錠腰縄の
被告だが、出廷
時にははずされていた。でも、裁判所に戻ってくる人も多いそうだ。
 
 
●検察審査会は裁判所の中にある。11人で5.6時間会議をする。
●検察審査会の審査員は、くじで選ばれるから年齢性差はまちまちだ。たまたま、女性だけとか、
 二度も選ばれた人も人がいたようだ。
●横領罪 窃盗とどこが違う?(バブル経済のはて参照)業務上横領は身分がないと成立し
     ない。ムム!えらいのだ。

会社経営者:社長「500万円融資して下さい、利息は毎月払うから。」しばらくして「また1500
万円融資して。前の手形をジャンプしましょう」貸した人に利息は払われていたが融資金額が
膨れて何千万円。社長は会社経営に失敗して倒産。貸した人は元金、何千万円が帰ってこない。
持っているとはいえ、高い利息があるとはいえ、なぜ大金を人に貸す?儲け話への投融資には
金が返ってこないというリスクが在るのは当然わかっていたはず。貸した人、民事裁判で負けて、藁をもす
がる思いか、裁判に負けた腹いせか、検察審査会に申し立てた。
 
 
 ●偽証罪 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき。
  ならばそれ以外のとき嘘をついて
もいいのか?嘘をついたらたらアカン。
●共同正犯 複数で犯罪をしたら、役割分担に関わらず同じ罪。共謀共同正犯 後ろの黒幕が犯罪を
  命令示唆しても同罪。但しその証拠が必要。司法は証拠がなければただの寝言

  悪い奴ほどよく眠るこの社会。我々素人の出番かも。


被疑者は某大学教授。訴えたのは現役の女学生。○月○日 「なんと!君は程度が悪いのだ」:侮辱罪。
○月○日 「卒業させないよこんな成績じゃ」:脅迫罪。「落第したから学費を弁償しろ」と裁判。最初
の頃の供述や手紙から、うまくいっていた師弟の関係が、学年が進んでいくうちに歪んでいく。教授が悪い
と学校に訴え、ビラをまき、はては裁判所まできた。この女学生は、司法や社会の仕組みを利用
して、気に入らない先生をイジメているだけではないのかな。この先生が意地悪で、権威主義で、
女学生を奴隷やホステスのように扱っているとは思われない。最近、痴漢やハラスメントでやっつけられている
大物で賑わっている。このやり方だと「イヤナヤツ」をやっつけられる。
でも「ワルイヤツ」と「イヤナヤツ」は違うのだ。
筆者格言 「イヤナヤツ」は心から褒めちぎれ。すぐ「イイヤツ」に変わる。
 
 
●横領罪と窃盗罪 郵便配達バイトのA君、商品券入り封筒を持ち帰った。怖くなって押入れに隠
 した<横領罪> 封を切りポケットに入れた<窃盗罪> 窃盗の方が罪は重い。
●窃盗罪 一番多い犯罪だが内容はいろいろ。占有、領得の意思などとややこしい単語がならぶ。我々素人
 は、素人なりに事の善悪で判断しなければ。これはかわいそうだとか、これは悪質だとか。

資産家で一流大学出の元保健所所長。被疑者は○○大銀行行員。バブル期、銀行が何十億円を使っ
てくれと言ってきた。相場に、不動産にと大金を使ったが、バブルがはじけて無一文になった。元々持っていた
土地建物を返せとの民事裁判に負けた。負けたのは銀行員が脅迫、偽証したからだと
主張した。

バブル期、世の中が騒がしかった。真面目に仕事しなくても金を転ばせば儲かると、隣のおっちゃんおばちゃん
までがエキサイト。金を転がした人でなにもかもなくした人の話をよく聞く。バブル期
の事件で、何十億円、何百億円
の話がよく出るが、そんな大金は何処に消えた。金を転がし
た人には罪はないのか。